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Weekly Interview

人の数だけそれぞれの人生があり、物語があります。 本ブログでは週に一回、インタビュー形式でさまざまな物語を紹介します。

Interview Blog Vol.03

作りたい本を作る、それが編集の面白さなんです

下野新聞社 編集出版部嶋田一雄

2017.05.16

嶋田一雄さん

 

わからないことだらけからはじまった“本づくり”

嶋田さんは下野新聞社編集出版部に在籍され、本づくりはもちろんのこと、地方出版のためにさまざまな取り組みをしています。出版部としてのキャリアは何年くらいになるのですか。

 入社してからすぐに出版部に配属されました。他部署へ異動していた期間を抜くと、合計で18年近くは出版部に在籍しています。

出版部に配属されたときはどう思いましたか?

 本が好きなので作る立場になれて嬉しかったのですが、“本づくり”のことは全くわかりませんでした。

 企画・構想からはじまり、文章・デザインの作成と確認、印刷・製本を経てようやく一冊の本ができあがります。その後も流通や販売などがありますから、それで終わりではありません。

 その中での自分の役割は編集者として動くことなのですが、当時はその“編集”がまったく分かっていなかったのです。自分で文章を書くことが編集なのかな?って思っていた時もありましたよ(笑)

どのようにして仕事を覚えていったのですか?

 とにかく質問です。全く面識がない人でも、この人は知っていると思えばすぐに質問。冷たくあしらわれることがほとんどですが、待っていても誰も教えてくれませんからね。

 あとは自分なりに出版業界について考え、分析し、勉強をしました。

 入社してから間もなく、毎日多くの本が発行されていて、一握りの売れる本と多くの売れない本がある。この違いはどこにあるのだろう? と考えるようになりました。人に選ばれる本はなぜ選ばれるのか、その理由を知りたいと思うようになったのです。そしてそのカギは「伝えかた」にあるのではないかという結論に至りました。キユーピーやサントリーなどの広告に多かったのですが、書き手の息づかいまで伝わるような文章が好きだったんです。

 広告のキャッチコピーって限られたスペースでしっかりと読ませて伝えることができる文章が多いなってずっと感じていたので、それも含めて広告について勉強したいと思うようになったのです。

書店でもたくさんの本の中で、いかに人の目を惹きつけるかはとても重要になってきますよね。 広告についてはその後、独学をしたのですか?

 入社した年の秋に、東京の広告学校が短期講義を開いたのです。ちょうど広告について知りたいと思っていたし、働いてお給料が貰えるようになったのだから、自分に投資をしようと思いました。仕事が終わってから新幹線で行けば間に合いました。週に一回、約半年間通いましたね。

 大手メーカーの広告を手掛ける一流の人たちの話がたくさん聞けてよい勉強ができました。視野も広がりましたし、またそのおかげで、編集とは何かがおぼろげながら見えてきたことを覚えています。

自分が環境を育てる

観光・レジャー、歴史、写真、実用書などなど、さまざまなジャンルの出版物がありますね。

 入社して3年たったころ、ルーチンワークをこなしているだけの自分に気づき、「このまま当たり前のことをしているだけじゃつまらないな」と思うようになりました。だから思い切って自分が作りたい本をつくることにしました。

 一から企画を練って、相談もたくさんして、なんとか作ることができました。それだけでも嬉しかったのですが、その本は評判もよく、ロングセラーになったのです。

 その後も企画を出し続けてたくさんの本を出すことができ、出版部内で「もっと新しい本を作ろう」という、新しい流れのようなものが生まれたように思えます。 

出版の醍醐味を味わったわけですね。逆に苦労することはどんなことでしょうか。

嶋田一雄さん 編集者としての要望を各工程の担当者に正確に伝えることですね。本づくりはデザインや文章作成、印刷・製本など自分だけではできないことだらけです。

 全国地方紙の出版部門が集まる会合で、先輩たちに「作りたいものを形にしてくれるデザイナーもライターもいない、本を作る環境がないんです」と相談したことがあります。そうしたら「嶋田くん、それは君が育てるんだよ」と言われハッとしました。

 それまで曖昧な指示しか出していなかった自分に気づいたのです。伝わっていないのだから、思ったものが出来上がってくるはずがないですよね。

その言葉のおかげで意識が変わったのですね。

 ラフでもいいから書いた形で伝える、買った本や入手したパンフレットでいいなと思ったものは参考にして自分の引き出しを増やすなど、指示の幅を広げることの大切さも学びました。

 本を作る環境がなかったわけではなく、自分が本を作るための環境を育てていなかったのです。

 本づくりに携わる、さまざまな役割の人たちに気分よく仕事をしてもらって、そのうえで自分が作りたい本をつくる。それができるところが編集の面白いところだと思うんですよね。

今後の目標はありますか。

 栃木県の出版社と出版物はこんなにも素晴らしいんですよってことを広めたいですね。多くの人が携わって一生懸命に作った本がこんなにありますって。それを県内の本にまつわる人たちと協力しあいながら発信していきたいです。

INFORMATION

 毎年11月第1土日に宇都宮市のオリオン通り曲師町商店街で「栃木県出版文化展」という企画を開催しています。栃木県内で出版活動を行っている版元が一緒に力を合わせて自分たちの本をもっと知ってもらい手に取ってもらおうという趣旨で今秋で9回目となります。 郷土の書籍や雑誌を編集した人が自ら販売しお客様と触れ合う機会で、毎年多くの気づきや感動があります。同じ場所で本好きによる「オリオン一箱古本市」やほかにも多くの本に関するイベントを開催しています。ぜひ足をお運びください。

 

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