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紺碧の将

自分のことはケヤキに訊け

2011.06.17

 この鬱蒼と繁った森は熱帯雨林? とまでは思わずとも、そうとう山深いところの風景と思うだろう。ところが、グチャグチャゴチャゴチャ度でニッポン一と言われる新宿駅から電車でわずか4分の駅から徒歩で数分のところにある風景と聞けば、驚く人も多いにちがいない。

 私が週の半分を過ごすマンションの窓外の風景がこれだ。ベランダに出て手を伸ばせば、あと2メートルほどでケヤキの大木の葉っぱに触れることができる。

 思えば、不動産会社の営業に案内されてこの部屋に入ったときが決定的瞬間だった。この部屋と10階の部屋が空いていた。10階のそれからは新宿御苑が一望できた。おそらく多くの人はそちらを選んだだろう。一望できる方が価値が高いと思うにちがいない。事実、3万円くらい家賃も高かった。

 しかし、即断即決。木々のオーラを感じたからだ。他にいくつかの候補もあげていたが、見学せず、すべてキャンセルした。

 「何ものかにいざなわれてここに来た」

 今、私はそう思っている。だって、都内のマンションといえば、星の数ほどもある。その中で、こういう場所を得られる確率というものは、そんなに高いものではないだろう。

 

 さて、その後の私は、以前に増して自由の境地を得るに至った。それまでも好き勝手にやってきたが、その度合いが一気に高まったのである。

 早い話、一日のうちで植物と接するに最適の時間をそれに充てることにしたということ。かといって、遊んでばかりで暮らしていけるはずもないので、それ以外の時間は常に仕事も学びもスタンバイ状態にしておく。朝も夜もないし、休日も盆暮れもない。

 多くの人は、仕事のオンとオフがはっきりしている。しかし、私は限りなく曖昧なのだ。というか、どこまでが仕事でどこまでが遊びでどこからが学びなのかわからない。おそらく、いつもその3つが入り混じっているのだろう。

 ところで、さすがにここは気が横溢しているらしく、弱ってしまった植物をここに持ってくると、別人のように甦る。植物は正直なので、いい場所にいるときと悪い場所にいるときの反応がまったくちがう。ゲンキンなものである。

 

 さてさて、これから私はどんな方向へ進むのだろう。

「松のことは松にきけ」という言葉があるが、今の私の心境は「自分のことはケヤキに訊け」。そんなわけで、窓外のケヤキに訊いているところである。

(110617 第259回)

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