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紺碧の将

仕事は哀しみを癒す特効薬

2011.06.13

 今さら言うまでもなく、今回の震災は数々の悲劇をもたらした。とりわけ、自ら被災したばかりでなく、仕事も奪われた人の絶望は想像にあまりうる。極端な話、どんな哀しみも仕事に没頭してさえいれば、そのひとときはつらいことを忘れることができる。仕事は、哀しみを癒す特効薬であり、その人の人生の写し絵でもある。

 社屋や工場や店舗や漁船が津波で流された人、原発事故によって農業ができなくなってしまった人……、その数は枚挙にいとまないだろう。その人たちの哀しみを思うと、こうして毎日仕事ができることに感謝しないではいられない。

 自分に置き換えればわかる。ずっと生活補助金をあげるから仕事はしなくていいよ、と言われて、はたして嬉しいだろうか。休暇にしてもさまざまな娯楽にしても、仕事があるからこそ輝くのである。

 

 以前、ある料理専門学校に随行してイタリアを訪れた際、パルマ近くのチーズ工場を見学したことがある。巨大な倉庫のなかを案内されたとき、案内してくれた人の誇らしげな表情が印象的だった。右上の写真のように、整形されたチーズがうずたかく積み上げられているのだが、「これはわれわれにとってばかりではなく、銀行にとってもお金より価値がある」と説明していた。

 仕事というものは、そういうものだろう。「お金よりも価値のあるもの」を便宜上、お金で取り引きしている。そこに、その人の矜持が生まれる。

 仕事以外で、そういった矜持を得られる機会はあるだろうか?

 おそらく、ないと思う。あったとしても、かなり少ないと思う。

 そう思えば、復興のビジョンは、「仕事の創出」にこそ、より力を入れるべきだということがわかる。特に原発で仕事場を奪われた人に対しては、考えられる限りの対策をうつべきだ。それができなければ、国政をあずかる意味はない。

(110613 第258回 写真はイタリアのチーズ工場に積まれているチーズの山)

 

 

 

 

 

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