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紺碧の将

生麦事件とカダフィ大佐

2009.10.10

 去る9月23日、国連総会でリビアのカダフィ大佐が演説した。規定の15分を大幅に上回る1時間36分の熱弁は、けっしてお上品とは言い難いが、私が普段思っていることを代弁してくれたみたいで実にたのもしかった。

 

 世界最大の既得権益って何だと思う?

 まぎれもなく国連常任理事国5カ国の拒否権であろう。カダフィ大佐は、「国連憲章前文で各国の平等をうたっているのに、一部の国に拒否権が与えられている」と痛烈に批判し、国連憲章が書かれている本を無造作に放り投げた。たしかに下品なふるまいにはちがいないが、多くの人が思っていることを正々堂々と言ってのける姿を見て、案外この人はただの危険人物ではないな、と思った。

 そもそも国連とは、P5(常任理事国5カ国)の利益に反することは採択しない。P5は、各国の顰蹙をかうのでほとんど拒否権を行使できないという意見もあるが、絶対的な拒否権を持っているということ自体がすでに大きな力となっている。これ以上の不公平があるだろうか。

 私は以前から、国連改革ではなく、国連に代わる新しい機関の創設が望ましいと言ってきたが、もちろん、世界最大の既得権益である拒否権をP5が手放すはずがない。

 小沢一郎氏は国連重視主義だが、P5の利害の手先に使われるだけだという認識はないのだろうか。

 

 生麦事件を思い出した。文久2(1862)年、神奈川の生麦村で、島津久光の行列を乗馬のままさえぎったイギリス人商人リチャードソンらを奈良原喜左衛門と海江田信義が斬った事件である。

 当時のイギリス人は、「郷に入らば郷にしたがえ」という概念がなかったのであろうか。訪れた国のルールを土足で踏みにじったからには真っ二つに叩き斬られても仕方がないはずだが、その後、イギリスは幕府に賠償を求めたり、鹿児島湾に艦隊を派遣したりと(それがきっかけで薩英戦争へ発展)、傲岸不遜ぶりは筆舌に尽くしがたい。

 今年の夏、鹿児島を訪れたおり、桜島から薩英戦争があった鹿児島湾を眺めた。右上の写真がそれ。湾内をイギリス艦隊は示威行動をしながら運航、それに挑発されて薩摩藩が大砲をぶっ放し、戦争へと発展した。

 しかし、薩摩藩が世界最強のイギリス艦隊に勝てるはずもなく、あっという間に勝負はついた。

 その後がおもしろい。その戦争をきっかけに、イギリスと薩摩が急接近するのだ。薩摩は長州とちがって、存外変わり身が早い。拘泥しないという性格は南国特有のものか。

 

 カダフィ大佐の演説から生麦事件、薩英戦争と話が飛躍してしまったが、かつての自信もどこへやら、今の白人はまったく精彩を欠いている。ドイツなど、一部の勤勉な国は別として、白人国家がそろって凋落していく時代がきているとも言えるのではないだろうか。もちろん、日本がその仲間に入って、いっしょに凋落してしまってはいけない。

(091010 第121回)

 

 

 

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