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紺碧の将

示現流のような仙厳園

2017.12.03

 鹿児島市に仙巌園という広大な園庭がある(世界遺産)。島津家の別荘として造られたもので、桜島を築山に錦江湾を池と見立てるという、いかにも九州的な大胆さが特徴だ。

 京都の庭は、繊細な芸術品のような格調と緊張感で「愛でることはできても、寛ぐことはできないな」と思うが、ここはまったくさにあらず。南国の森の中に、あまり肩肘張らず造りましたという大雑把さがいい。広大な敷地には、曲水の庭や展望所、神社、竹林などのほか、もちろん御殿もある。

 入り口近辺に興味深い物がある。幕末期、薩摩藩が自力で造った反射炉の基礎部分である(右写真)。

 欧米列強の脅威に対抗するために大砲が必要だと考えた藩は、オランダ人ヒュゲニンの図面を頼りに、なんと自力で設計図を書き、反射炉建設に乗り出し、早くも2回目で成功してしまうのだ。射炉はドーム型の炉の天井で炎を反射させた強い熱で鉄を溶かし、大砲の鋳型に流し込む施設である。通常の石炭では火力が弱いため、火力の強い石炭を探し出して使っている。

 欧米に対抗するため、オランダの技術を取り入れたというのも興味深い。正確にいえば、「取り入れた」ではなく「勝手に真似をした」であろう。柔軟である。そういえば、薩英戦争で彼の国の力を痛感したのち、薩摩藩は英国に接近し、技術を導入するという柔軟な対応をしている。昭和の軍部とはまるで正反対だ。

 成功の歴史、失敗の歴史それぞれから学ぶことは多い。それを怠った国、組織は衰退あるのみだ。

 

※悩めるニンゲンたちに、名ネコ・うーにゃん先生が禅の手ほどきをする「うーにゃん先生流マインドフルネス」、連載中。

https://qiwacocoro.xsrv.jp/archives/category/%E9%80%A3%E8%BC%89/zengo

(171203 第771回 写真上は製鉄の反射炉。下は水の分岐と水量を調整するための高枡)

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