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紺碧の将

レコードの音のふくらみ

2017.06.23

 これまで、自分はなにを栄養にして生きてきたのか?

 いろいろあるが、はっきり言えることは、小学生の頃から親しんだ海外の文学とロックミュージックだ。そんな人間にとって、レコードは最良のテキストだった。
 最近、レコードとレコードプレイヤーをChinomaに運び、仕事に疲れると大音量でレコードを聴く。これがまた絶妙な気分転換になると同時に、とてつもないエネルギーを与えてくれる。
 小学生4年の頃だったか。ビートルズの『ヘイ・ジュード/レヴォリューション』や『オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ/ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』のシングル盤を買った。「な、な、な、なんなんだ、これは〜!!!」と衝撃が走った。文字通り、体中に電気が走ったのだ。以降、私はロックにメロメロになる。時にはクラシックも聴いたが、寝ても覚めてもロック、ポップ、R&Bだった。
 むさぼるように聴いた。初めて買ったLPはポール・サイモンの『Live Rymin’』だが、まずLPの大きさに感動した。「これがLPというものかあ!」と驚き、ためつすがめつ眺めていた。当時、LP1枚で一ヶ月分のこづかいが吹っ飛んだが、それだけに選ぶときは真剣勝負だった。それ以降、600枚近く購入したが、今聴くと、すべてが〝是〟ではない。今でも当時と変わらない感動を与えてくれるものとそうではないものがある。
 そうではないものは、例えばメロディーがしっかりしていないものだ。時流に乗りすぎたもの、稚拙なものは時間の流れに摩耗する。理屈っぽくて長いプログレッシヴロックの反動で現れたニューウェーヴはだいたいつまらない。セックス・ピストルズ(→P・I・L)、ザ・クラッシュ、ジャム(→スタイル・カウンシル)、ストラングラーズ、トーキング・ヘッズなど、どれを聴いてもイマイチだ。プログレもそうだ。ピンク・フロイド、エマーソン・レイク&パーマー、キング・クリムゾンなど、「ハンパだよな〜。これってクラシックに対する劣等感丸出しじゃない?」などと思ったりする。
 反面、時間の流れに摩耗しないのは、ビートルズ、ローリング・スーンズ、サイモン&ガーファンクル、レッド・ツェッペリン、クラプトン、ドアーズ、イーグルスなど王道を行っているやつ。50〜70年代のアトランティック・リズム&ブルースの曲もいいし、ボブ・マーリィやキング・サニー・アデ、ユッスー・ンドゥールなどのワールドミュージックもそうだ。もちろん、マイルスやコルトレーンがいたころのジャズもそうだ。何百回、何千回聴いても飽きない。
 レコードの良さは、音のぬくもり・ふくらみだ。針が擦れる音が入るため、神経質な人はデジタルの方がいいだろう。しかし、それを補って余りあるものがある。なんというか、いい水を飲んだとき、いい空気を吸ったときのように、明確に言葉では表せないが、体の細胞が喜んでいる気がするのだ。
 私が持っているCDの多くはクラシックだが、LPはほとんどがロック。合わせて約1700枚はまさしく血肉も同然である。
 取っ替え引っ替え大音量で聴いている。そして、またまた生命力がアップする。「100歳まで現役」はほぼ実現できそうだ。
(170623 第731回 写真はビートルズ『サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブバンド』のA面・B面)

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