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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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禁断の宮坂ワールド

2009.02.18

 昨年12月に出会った小島伸浩氏(株式会社JL社長、通称:ノブ君)が拙著『多樂スパイラル』をいたく気に入ってくれた。あげくの果て、「このコンセプトを雑誌にしたい!」と構想が一気に膨らみ、来る3月、フリーペーパー『たらく』となってこの世に出ることとなった。

 ノブ君は雑誌の流通業を営む会社の経営をしているのだが、かねてから「モノを運ぶだけではなく、心を運びたい」「損得情報じゃなく、読者の心に響く媒体を作りたい」と思っていたそうだ。時代の流れとしてはドンピシャである。そんなところに私と出会ってしまったものだから、ひとたまりもない。例えて言えば、カラカラに乾いている山と点火剤が出会うようなものだった。ちなみにノブ君は43歳。『Japanist』のマーケティングディレクターでもある。

 ……と、それはさておき、その『たらく』の表紙にテンペラ画家・宮坂健氏の作品を使うことになった。『多樂スパイラル』のカバーも宮坂氏の作品だから、というわけでもないのだが、やはり「多樂」のコンセプトに宮坂健の「なんでもあり的天真爛漫テンペラ画」は最適である。

 そんなわけで、本日、創刊号の表紙に使う作品のポジを借りるため、宮坂氏のアトリエを訪れた。鹿沼市の黒川という川のほとりに自宅兼アトリエがある。

 アトリエに入るなり、またまた土器が増えていることに気づいた。宮坂氏は知る人ぞ知る、旅の達人であり、古代土器の蒐集家でもある(『fooga』に骨董・土器の連載をしている)。

 宮坂氏が席をはずしている間、奥さんがコーヒーを淹れてくれたのだが、開口一番、「私はもう『fooga』に載っている主人の文章を読んでいないんですよ。だって、あれ、骨董でしょう?」。

 私は真意がわからず、きょとんとしていた。

 「この前、主人の教室を覗いたら、骨董がたくさんあってビックリしたのよ。夜中、ゴソゴソと何をしているのかなと思ったら、箱から骨董を取り出していたり……。この部屋だって、骨董ばかりでしょう?」

 早い話、奥さんは夫の骨董好きを喜べない状態になっているのだ。蒐集家の夫をもつ奥さんとしてはありがちなパターンである。画家としての夫は尊敬するし、旅行家としての夫にも理解しているつもり。でも、どうしてわざわざ3000年以上前の古い土器を買い集めて所狭しと並べているのか、さっぱり理解できないわ、ということなのだと思う。私は蒐集家ではないが宮坂さんの気持ちがわかるし、奥さんの気持ちもわかる(意外にものわかりがいい?)。

 そのうち、奥さんと入れ替わりに宮坂さんが戻ってきた。

 「宮坂さん、ずいぶんコレクションが増えましたね」と呼び水を打った。

 「もうビョーキだからね。キリがないし、お金もかかるし、いつかは足抜けしたいと思っているんだけど、なかなかできないんだよね」などと言いながら、ひとつひとつ土器を取り出し、説明が始まる。

 これは紀元前1500年頃のペルシャの土器で……、これは縄文時代の火焔式土器で……と、その背景にある文明史まで含めて、話し始めたらどうにも止まらない。立て板に水、とはこういうことを言うのだな、と思いながら適度に相づちをうつ。恐るべき博識である。宮坂さんは骨董・土器そのものだけではなく、背景にあるストーリーも好きなのだ。

 「これだけ増えちゃうと、どれが新しく買ったものでどれが前からあるものかわからないよ。よっぽど変わったものを買わない限りはね」

 いくら新たに買っても奥さんには知られていない、と思いこんでいる様子だった。

 それを聞きながら、人間て奧が深いなーとしみじみ思った。好きなのに、いつかは足抜けしたい。つまりは懊悩している。多彩な色を使って楽園やら宇宙やら架空の世界を描き続ける画家は、古代土器の魔力に取り憑かれ、もうどうにも手の施しようがないのである。

 でも、大丈夫、宮坂さん。

 「それでいいのだ!」

 バカボンのパパなら、きっとそう言うに決まっている。

(090218 第87回 写真は300号の大作を制作する宮坂健氏)

 

 

 

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