多樂スパイス

ADVERTISING

紺碧の将

建物と緑

2017.06.07

 日本の都市は、「合理的に発展させる」という名目で、どこもかしこも殺風景になってしまった。その反動なのだろうか、最近、建物に緑(植物)を〝植えて〟いるのをよく目にする。壁だったり、屋上だったり……。とてもいい傾向だと思う。以前も書いたことがあるが、街路樹を大切にしていないなど、緑化に意識の低い都市はダメだ。殺伐として、住民の心が透けて見えるようだ。

 いま、シンガポールは「City in a Garden」を掲げ、国をあげて緑化に取り組んでいる。国をあげてと言っても、シンガポールはひとつの市しかないのだが……。以前、テレビでその概要を見たことがあるが、それだけでも訪れてみたいと思う。
 東京に、もし皇居や明治神宮御苑、新宿御苑、赤坂御所、代々木公園などがなかったとしたらどうだろうか。じつにどうしようもない、下品な都市になっていただろう。
 ヨーロッパの都市は概して緑を大切にしている。拷問のような枝の剪定はしないし、枝が伸びることを前提に交通標識を設置している。市有地といえど、勝手に樹木を伐採することができない国も多く、公と個人の権利がうまく調整されている。日本ではなんでもかんでも個人の権利が優先されるが、もっと公の概念を強くしないと、国全体が精神的に干上がってしまう。
 そういえば、私の友人で、自宅の周りに森をつくろうとしている男がいる。近隣の土地を買い、建物を解体して更地にし、木を植えて何十年もかけて森にするというのだ。
 なんて素敵な夢だろう。そういう発想のできる人は、明らかに幸せである。
(170607 第727回 写真上は沖縄美ら海水族館の駐車場。下は新浦安駅前の交番が入っている建物)

ADVERTISING

Recommend

記事一覧へ
Recommend Contents
このページのトップへ