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紺碧の将

夢中になれるということ

2017.05.02

 好きなことは、だれにもひとつやふたつはある。しかし、夢中になれるものをもっている人は存外少ない。

 弊社(フーガブックス)刊、『ビーズの見る夢 木曽康子のビーズワークコレクション』が仕上がり、ページを繰っていてしみじみそう思った。
 ビーズといえば、女子の趣味と思っていた。しかし、この写真集を頭からしっぽまで見れば、そうとばかりは言えない。これはもう立派なアートである。
 アクセサリーをビーズで作る人は多いが、木曽さんは花などオブジェを数多く手がける。形はさまざま。どうして、こんな物が作れるんだろうと驚くばかりである。当然、作り方もその都度異なるだろう。
 あの細かいビーズをつないで、これほど立体的な作品を作れるということ自体が驚きだ。一枚の薄い紙から自在に姿を変える折り紙と同じである。

 

 木曽さんとは長いおつきあいである。弊社が『fooga』を刊行し始めたころ、共通の友人の紹介でお会いしたのだから、かれこれ15年くらいになる。その後、木曽さんのエッセイを掲載することになった。
 そう。木曽さんは文章も書くのである。フーガブックス刊『海流の旅人』の著者「林檸檬」とは木曽さんのペンネームでもある。文章も書くわ、ビーズも作るわ、酒も好きだわ、オペラも好きだわと、なんとも豊穣な日々をおくっている人である。

 じつは、木曽さんとは「同門」でもある。彼女は以前、小説家を志し、ダイナースクラブ主催のある文章講座に通っていた。そのときの講師が、内海隆一郎先生である。そう、現在『Japanist』で短編を連載している、あの方である。
 私も木曽さんから紹介してもらい、内海先生に師事することになった。ほんの短い期間だったが、あのときの厳しくも優しさに溢れた教えの数々は、いまなお心の奥底に沁み渡っている。残念ながら、氏は一昨年、帰らぬ人となった。しかし、内海先生への思いを共有する人がいて、よかったと思っている。木曽さんも同じ思いだと信じている。
 以前、木曽さんはこんなことを言っていた。
「無人島へひとつだけ持って行っていいと言われたら、迷わずビーズを選びます。だって、ビーズを作っていられれば幸せなんですもの」 
 なるほどね。この本は、そういう想いが結実したものだったんだ。
 興味のある方は、ぜひお求めください。お薦めです。
 弊社・都竹富美枝のデザインも、シンプルながら要所を押さえ、木曽さんの作品をいっそう際立たせている。
 やっぱり、いい仕事は人を幸せにするんだよなあ。
https://www.compass-point.jp/book/
(170502 第718回)

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