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紺碧の将

大工の技術がわかれば宇宙がわかる

2017.02.19

 『扉を開けろ』の出版記念パーティーに参加するため神戸を訪れたついでに「竹中大工道具館」に行った。新神戸駅から徒歩3分ていどのところにある。

 かなり以前、『fooga』の取材で宮大工の小川三夫棟梁に会ってから、大工の技術に興味をもった。長い間に培われた大工の技術は、日本人の自然観を含めた精神性の集大成であり、技術力の源だと思っている。とかく悪者にされがちな日本のゼネコンだが、その技術力は世界でも群を抜いていると言われている。その源は明らかに大工の技術だ。どうしていにしえの日本人は建築工学をろくに学びもせずに、あれほど精緻な建築物を造ることができたのかと感嘆するばかりである。

 小川さんとの禅問答のようなやりとりを思い出す。
「あれだけの重量を支えるための設計はどのようにしておこすのですか」
「規矩がわかれば、簡単にできる」
「規矩を理解するためにはどうすればいいのですか」
「ひたすら研ぎをすることだ」
 研ぎとは鉋の刃を砥石で削り、磨くことだ。
「雲一点の偽りもないほど研ぎをすれば、おのずと規矩はわかるようになる」
 ?????という感じだった。
 規矩(定規とぶんまわし=コンパス)と研ぎがどうつながっているのか、すぐにはわからなかった。今でもわからない。つまり、あの奇跡のような日本の大工技術は、近代の建築工学ではなく、まったく別の世界観によって形成されているということだ。それを学ぶために、ひたすら現場で仕事をするということ。ただの一点も疎かにせず、できる限りの仕事をする。その積み重ねによって、宇宙の仕組みを我がものとする。
 竹中大工道具館には、そんな大工の技術がぎっしりつまっている。道具の美しさは言うにおよばず、展示の仕方もいい。あちこちに男性の解説員がいて、聞こうと思えばいくらでも質問できる。
 少し残念だったのは、神戸在住の人に竹中大工道具館のことを聞いても、だれも知らなかったことだ。じつにもったいない。
 竹中工務店は素晴らしいものをつくってくれた。ぜひ一度、訪れてほしい。
http://www.dougukan.jp/
(170219 第701回 写真上は鉋と削った屑、下は鼃股)

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