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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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女の出番

2016.11.14

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 例えば、世に恋愛小説は数限りなくあれど、男にはラファイエット夫人の『クレーヴの奥方』を超えるものは書けまい。心の奥の襞に隠されている微妙な変化をとらえ、表現するのは女の特権事項なのかもしれない。

 ここでは、最近好きで聴いている3人の女性アーティストを紹介しよう。
 まず、ナターシャ・サン=ピエール。ご覧の通りのルックスである。フランス語で歌うメローな裏声が魅力だ。第一印象は「情感たっぷり過ぎる」と思ったが、聴くほどに抵抗感が減り、表現の巧さに舌を巻くようになった。
 フランスの音楽シーンは、どちらかといえば世界の中では「辺境」だった。私が小学生の頃、日本でミッシェル・ポルナレフというアーティストが人気をよんだが、子供ながらに「薄っぺらな音楽」という印象しかなかった。シルヴィー・バルタンやフランソワーズ・アルディなどもまったく心に響いてこなかった。むしろ、クラシックの近代室内楽がフランス音楽の真骨頂だと思っていた。ドビュッシー、フォーレ、ラヴェル、フランク、プーランクなど、きら星のごとく素晴らしい作曲家がいる。
 ナターシャ・サン=ピエール。22歳の頃に発表した『ラムール・ル・ミュー』がお気に入りだ。今、彼女は35歳くらいになっているはず。いろいろ聴いてみたいと思っている。
https://www.youtube.com/watch?v=yB_UBqMRvKk&index=1&list=PLVlY0gfF8xSSXYaovuRnoP-P0cgfMuNyb
 ところで、彼女はフランス人ではなかったようだ。ライナーを読むと、カナダ生まれだと書いてある。ケベック州なのかも。そういえば、セリーヌ・ディオンもフランス語圏のカナダ人だった。私が大好きなダイアナ・クラールはバンクーバー島生まれのカナダ人。カナダ出身の女性アーティストをマークしよう。

 

zaz 2人目は、ZAZ(ザーズと読む)。こちらは生粋のフランス人だ。ちょっと艶っぽいナターシャと違い、雑草のようなたくましさがある。はじめてこの人の歌を聴いた時、「なんだ、これは!」と稲妻が走った。それくらい衝撃的だった。
 赤坂ブリッツでのライブに行ったこともある。フランスでは「エディット・ピアフの再来」と言われているが、なるほどという歌いぶり。『ジュ・ヴー』という曲では手をラッパのような形に丸め、その間に息を吹き込んで新種の楽器のような音を出しているが、なんとも野趣あふれる技巧だ。
https://www.youtube.com/watch?v=Tm88QAI8I5A
 ただ、懸念するのは、デビュー盤『モンマルトルからのラブレター』が抜群に良く、その後は下降線をたどっていること。これってノラ・ジョーンズと同じパターンではないか。

 

%e3%82%a2%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%83%8a 3人目は、ロシアのヴァイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァ。
 いやー、すごいのなんのって。はっきりいってこの人、グールド以来の奇才だ。以前、コンサートに行ったことがあるが、模範的な表現とはまったくかけ離れていた。ピアニッシモは限りなく弱い音にしようとしたためか、音が消えてしまうという〝ミス〟を犯したし、強く弾くところでは勢いあまって弓の柄がヴァイオリンのネックにぶつかってしまうという〝ミス〟も犯した。誰が聴いてもはっきりわかるミスを何度も犯したが、だれにも真似のできない感動を与えてくれた。
 これは西洋の音楽教育の賜なのだろう。作曲家が天国で「そうそう、そういう風に弾いてほしかったんだよ」と手放しで喜んでいるにちがいない。
 以前、テレビで日本の若い音楽家がカルテットを組み、試行錯誤する様子を見た。日本に残った人とヨーロッパへ渡った人との間で、解釈に大きな差違が生じてしまったのだ。とにかく日本の指導者は間違わないで譜面通りに弾かせたがるし、ヨーロッパの指導者は間違ってもいいから自分の表現をしなさいと教える。同じ曲を演奏するにも、アプローチが正反対なのだ。
 日本人のクラシック音楽におけるレベルは世界最高クラスになっていると思うが、「巧い演奏家」はたくさんいても「聴かせる演奏家」は少ない。どうやったら聴かせることができるのか。その答えをアリーナは示してくれている。
 ここ最近、アリーナはモーツァルトのヴァイオリンソナタ全曲に取り組んでいる。これは魅力的な演奏ばかりだ。ラヴェルもメンデルスゾーンもイザイもいい。そして、なによりバッハだろう。ヴァイオリン協奏曲もパルティータも秀逸だ。まずはこれを聴いてほしい。
https://www.youtube.com/watch?v=nvJMxd0QW4s

 

 小池都知事もそうであるように、女性の長所はしなやかであること。もっともっと女性が活躍できる社会になってほしいと願っている。
(161114 第679回)

 

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