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紺碧の将

大道芸が好きだ

2008.10.18

 大道芸が好きだ。あれを見ているだけで、心が和んでくる。

 時々、横浜の山下公園に面したホテルに宿をとる。読みかけの本を1冊だけ手にし、海に面したベンチに腰掛け、ゆっくり文字を追う。

 波がチャプチャプ揺れる音を聞き、潮風を頬に受けながら、本に夢中になり、気がつくと空が鈍い色になっていることがある。いよいよ日が落ちていくという兆しである。休日であれば、その頃に大道芸が始まる。ちょうど氷川丸が繋がれているあたり。灯りに群がる夏の虫みたいに、人がゾロゾロと集まってくる。

 大道芸をやる人は若い人が多い。見た目には普通のアンチャン風だが、いざ芸が始まると、一気に引き寄せられる。芸も素晴らしいが、口上もいいのだ。よくもペラペラと間断なく喋りながらこれほど難しい芸を連続で披露できるものだと感心しながら見てしまう。これだけの芸を身につけるまでには、並大抵の努力ではなかっただろうが、本人はそういう欠片を微塵も感じさせないところがいい。

 やがて日が落ちる頃になるとクライマックスがあり、終わった後は「おひねり?」を求めることとなる。最後の展開はあからさまなのだが、よくぞ頑張ったと「お布施」をしないわけにはいかない。そういう結論がとても心地よいのである。

 サブプライムローンの破綻が影響し、世界的な消費不況になりつつある。たぶん、日本も未曾有の不景気になり、生活破綻する人が続出するだろう。

 しかし、人はどんなに暗い世の中になっても、気持ちよくお金を使いたいという願望を捨てることはできない。要は、気持ちよくお金を使ってもらえる立場になるかならないか、だ。とはいうものの、それが最も難しいのではあるが。

 悪いことを世の中のせいにしてもなんら事態は変わらない。むしろ、ふさぎこむばかりだ。好きなことをして、人に喜んでもらえる。この黄金の方程式を身につけたヤツはどんなに世の中が変わろうが、強い。

(081018 第72回 写真は横浜・山下公園での大道芸)

 

 

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