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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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中世絵巻の世界にどっぷり浸かる

2016.07.11

恋に狂ひて まずは、山田宏さん、当選おめでとうございます。

 ほんとうに良かった。
 あとは思う存分、自民党も揺るがすほどの気迫で頑張ってほしい。

 

 典雅な劇を観た。
 横浜ボートシアターの『恋に狂ひて』(KAAT=神奈川芸術劇場にて)。
 予備知識をもたずに出かけたため、いきなり説教節が会場にとどろきわたり、人形を持った俳優が舞台に現れた時は不意をつかれた。時代背景は嵯峨天皇の御代、しかも中世の言い回しによる説教節だ。正直、「ちゃんと飽きないで最後まで観られるだろうか」と不安だった。
 ところが、またたく間に作品に引きずり込まれた。そう、首根っこをつかまれ、その独特の世界に体ごと連れて行かれた、そんな感覚だ。

 物語は……。
 母の命と引き替えにこの世に生まれてきた「愛護の若」(公家・清平のひとり息子)がこの物語の主人公。子がいなかった清平夫婦は天界の観音と取り引きをしたのである。
 愛護の若は美貌であるがゆえ、悲劇の糸にからめとられていく。継母「雲居の前」に恋い慕われたことが発覚し、父に疎んじられ、滝に入水してしまう。そして、継母をはじめ、愛護の若に関わった108人が彼を追って入水する。

 

 簡単に書けば、物語はそれで〝ジャン、ジャン〟である。
 しかし、この作品は数々の野心的な取り組みによって、人間の業、人間関係の綾をみごとにあぶり出している。
 では、どこが「野心的」か?
①人形を持った俳優が演じるというプリミティブなスタイル。どちらも観ているうち、両者が一体になっていることに鑑賞者は気づく。ある意味、確信犯的な手法だ。
②俳優は人形を持ったまま低い位置での演技を余儀なくされる。動かない人形と身体表現が美しい人体の対比がユニークである。
③エレキ三味線と説教武士が絶妙な味を醸している。エレキ三味線は西部劇のようでもあり、ライ・クーダーのスライドギターのようでもあった。
④パーカッションとギターの音響効果も物語の進行にいい意味でのストレスを与えていた(ときどき、やり過ぎじゃないの? と思ったけど)。
⑤仮面など小道具の妙
⑥舞台をわざと狭くしているため、鑑賞者の視点が分散しない。
 と、こんなところだろうか。いずれにしても、随所に大胆な仕掛けがあって、観る者を飽きさせない作品だ。
 横浜ボートシアターは1981年、石川町駅前の運河に浮かぶ木造はしけを改造した劇場を拠点に活動が始まったとの由。横浜らしいなりたちだ。
 なぜ私がこの作品を観ることになったかといえば、『Japanist』で連載していただいている近藤隆雄氏のお嬢さん(春菜さん)が俳優として出演しており、招待していただいたのである。
 彼女はパリで演劇を学び、国際劇団アユリテアトルに所属して活動してきたが、帰国後、遠藤啄郎氏(脚本、演出家)に師事している。発声も動きもみごとだった。
 人の縁とは不思議なもので、新たな世界を覗くきっかけを与えてくれる。そういうことが多い人生は、豊かな人生と言えるだろう。
 残念ながら本公演は終了したが、下記サイトにて詳細をご覧ください。
http://www.yokohama-boattheatre.org/
(160711 第649回 写真は『恋に狂ひて』のパンフレット)

 

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