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紺碧の将

辞世の句をかな書きで

2016.07.03

多美男のうた「髙久さんの好きな歌を教えてください。かなで書きますから」

 今年の2月、大阪にお住まいの木下直子さんからメールが届いた。木下さんは『Japanist』に「温故知新の旅」という、自身の文章をかなで書いた作品を連載されている。通常、すでにある歌を書く書家が大半だが、木下さんは〝自身の〟長い歌を書き、それを「やまとかなうた」と名づけておられる。
 さて、好きな歌?
 けっこう、たくさんある。ほとんどは西行だが、これひとつというのは難しい。であれば、私も自分の歌を書いてもらおうと思った。
 あれこれ検討した結果、以前書いた歌を手直ししたものを送った。もちろん、辞世の句として書いたものだ。

 

 われに問ふ いづくへ向かふ わが身かな まだ得ぬ心地 楽しからまし

 

 この先、どこへ向かっていくのだろう? わからん。しかし、わからないからこそ、どんなことが待っているのか楽しいのではないか。そんな内容だ。
在原業平 木下さんは先日、はるばる上京され、書き上げた作品を手渡してくれた。
 初めて『Japanist』を読んだ時、共感した人(山田宏さん、中田宏さん、近藤隆雄さん、神谷真理子さん)をイメージした句も含め、全部で11作もあった。最後は「君が代」だ。
 私はこれまで独立書人団系の少数漢字書を中心に親しんできた。が、かな文字の美しさはまた別格だとも思っている。流れるような筆跡は、漢字にはないものだ。料紙という、詩歌を書くための紙そのものも美しい。こういう文化が、はるか1000年以上も前に確立していたというところもこの国の奥深さだ。
 いまさらかなを書で書くのはできないが、辞世の句はその気になれば、いくらでも詠むことができる。稚拙でもいいのだ。自分の思いが込められていれば。
 ぜひ、皆さんも辞世の句を詠んでください。
(160703 第647回 写真上は拙作、下は在原業平作「ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」)

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