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紺碧の将

文学の薫る街

2016.02.06

鎌倉文学館 前々回に続き、鎌倉ネタを。

 自分でも意外だが、初めて鎌倉文学館を訪れた。
 まず、ロケーションも建物も、文学をテーマとした記念館としては申し分がない。元々、加賀・前田家の系譜につながる侯爵家の別荘だった屋敷を使っているのだから、さもありなんだ。大戦後は、デンマーク公使や佐藤栄作元首相が別荘として使用していたこともある。三島由紀夫の『春の雪』に登場する別荘はこの建物をモデルにしている。
 展示室には鎌倉ゆかりの文学者の直筆原稿や書簡、愛用品などが展示されている。鎌倉にゆかりのある文学者の一覧表があったが、「こんなに多くの作家が住んでいたのか!」と驚くばかりだ。海や山があって歴史があり、都心にほど近い上に静かな環境であることが創作に適しているからだろう。「文学都市かまくら」とあったが、じゅうぶん納得できる。地方自治体のPR物にありがちな、〝名前倒れ〟になっていない。
川端康成旧居 かなり前から「地方の時代」と言われている。本サイト内の「ちからのある言葉」でも、リンゴ農家の木村秋則氏の「植物が成長するためには、葉っぱはなくてはならないのな。植物は根からの水と養分、それに葉っぱからのでんぷんがないと育たない。だから、葉っぱがないとやがて枯れていく。葉っぱは末端でしょう。末端というのは地方のこと。地方がきちんと成長しないと、幹も生長していかないのな」という言葉を紹介しているが、その「地方」もただ漫然とあるだけではダメだ。どのようなところにするのかという理念がなかったら、その他大勢の自治体と変わらず、都市間競争、地方間競争に後れをとることになる。
 そういう点で、毎年行われている地方自治体ブランド力ランキングはかなりの割合で実態を表していると思う。下位に沈んでいる自治体は、根本的に理念の再構築を図るべきだというシグナルでもある。
(160206 第613回 写真上は鎌倉文学館、下は川端康成旧居の表札)

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