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紺碧の将

内なる声を聴く

2015.03.08

狩野智宏 前回に続き、次号『Japanist』の取材ネタを。

 ガラス造形作家の狩野智宏氏。母方の曾祖父は、あの狩野友信。言わずと知れた、狩野派の絵師だ。
 学校を卒業すると、狩野さんは日本画の世界ではなく、CF制作会社に入社する。当時、TV-CFをはじめ、広告は時代の花形であり、ダイナミックな生活文化だった。そこで業界一流の人間たちとモーレツに働き続けたが、過労がたたったのか、ある日、交通事故に巻き込まれる。
 病院のベッドで、狩野さんはその後の行く末を考えた。そして、自らの内なる声に従って、ガラス造形作家の道を歩むことを決意する。
「いまのままでいいのだろうか?」、こういった煩悶は、多くの人が抱えるものでもあるだろう。
 しかし、方向転換は大きなリスクと労力を要する。したがって、ほとんどの人が内なる声を聴こうとせず、心の耳を閉ざす。その後、無難な人生を歩んだとしても、ずっと頭の片隅に「後悔」という2文字が残るであろう。
 狩野さんは、じつに潔かった。しかも、容器など実用性ある作品ではなく、オブジェをつくろうと思い、それに徹した。下の作品『amorphous』は彼の代表作だが、見る角度や光の具合によって、さまざまに姿を変える。
 狩野さんは、すべてを人間の手業で御するという方法をとらず、ある部分は自然の動きに任せる。つまり、神人合作だ。それこそ、日本人の感性に合った制作スタイルだということをわきまえているのだ。だからなのか、ガラスという硬質で冷たい素材であるにもかかわらず、見ていて安らぎを覚える。
アモルファス「日本人は古来より、季節の中に時間軸を持っていた民族だと思う。だから本当は明治5年に導入したグレゴリオ暦というのは日本には合っていない。宇宙の法則を身近に感じ取れる能力を、日本人はもう一度取り戻さなければいけない。今の時代にこそ、こういう能力を持った日本人は世界で大きな役割を果たすと信じています」(狩野さん談)
 まさにそういうことなのだ。
 詳しくは次号の『Japanist』にて。16ページの記事でお届けする。
(150308 第547回 写真上は狩野智宏氏、下は彼の作品『amorphous』)

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