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紺碧の将

頭抜けた人たち

2014.04.01

塚本こなみさん対談 この稿の5回前で、『Japanist』次号で紹介する二人について書いた。一人は、世界初の超小型通信衛星を開発し、実用化に成功した中村友哉氏。もう一人は、世界で初めてレーザーディスクによるアナログレコードの再生に成功した千葉三樹氏。

 本稿では、それに続き、次号で紹介するお二人を。

 まず、塚本こなみさん。女性初の樹木医である。

 それまで夫の造園業を手伝っていた塚本さんは、「男性は造園を土木としてとらえているので工事が終わると、次の仕事に意識が向いてしまい、植えた木々を保全するのが疎かになる。だから、自分がそれをやってみたい」と一念発起。樹木医となった。

 巻頭対談において、中田宏氏との対談をしていただいたのだが、そのまま何時間でも何十時間でも聞いていたいと思ったほど本質・本源そのもので、興味深い話の連続だった。

 語り口調は、すでに人間俗世界の域を超えている。まるで宇宙そのものが語りかけてくるようでもあった。

 塚本さんといえば、「あしかがフラワーパーク」の大フジの移植で有名だ。不可能と思われていた一大事業を成功させたのは、地球のなりたちを見通す目とたしかな技術・知識、そして植物への限りない愛があってこそ。いったい、この小さな体のどこにそれほど膨大なエネルギーがあるのだろうと不思議でしかたがなかった。

 塚本さんは言う。

 「私は『心根』という言葉がとても好きなのですが、人は心、樹木は根がいちばん大切なのだと思います。『枝葉の症状、すべて根にあり』と考えれば、表面上に表れた症状は、その根っこに問題があるということです」

 「人の手で植えられた木は、数年間は支柱で支えてあげなければいけないのですが、それも、ずっと支えていてはいけません。よく教育関係者の方やお母様方にお伝えするのですが、支柱が外れたあと、木は風にゆれて不安定になります。でも、それで根がしっかりとできあがりますから、けっして、再び支柱をつけるようなことはしてはいけません。そうでないと一生、支柱がとれなくなってしまいます」

 「樹木医になる前は、お花見シーズンになりますと、みなさんと同じように、桜の花を見て楽しんでいましたけれど、今は楽しむことができなくなりました。『ああ、あそこに病気の木がいる』、『ああ、この根は苦しんでいるだろうな』と、気になって仕方がありません」

 つまるところ、樹木も人間も同じなんだと認識を新たにした。

 塚本こなみさん、ほんとうに素敵な方です。

Mr.Watanabe もうひとりは、株式会社アイエスエフネットの渡邉幸義氏。

 「仕事があるから雇うんじゃない。僕は、雇うために仕事をつくる」という、世間の常識と180度異なる経営方針で成長を続けている。現在、同社は、グループ全体と海外8カ国を含め、計3000人に働く場を提供している。さらに今後、自社に関わる人を100万人に、雇用を10万人にしたいという。

 まさに、「途方もない」ことを考える人だ。しかし、世の中を変える人は、えてしてそういう人。常識の枠にとらわれている人に、世の中を変えることはできない。

 渡邉氏は、人に喜んでもらえることが自分の最大の幸せとわかっているのだろう。だから、脇目もふらず、人のために雇用創出を続けている。しかも、世間のほとんどの会社が忌避している「就労困難者」を積極的に雇用しているのだ。障がい者、ひきこもり、難病、性同一性障害、生活保護受給者など。障がい者に対する雇用義務はある程度の規模以上の企業には法律で義務づけられているが、雇い入れた障がい者を積極的に生かそうとする会社はほとんどない。ルールだからしかたなくやっている。

 しかし、渡邉氏は嬉々としてそういう人たちを雇い入れ、彼らの特性を生かしたビジネスを創出し、しかも(ここが大事なのだが)、利益をあげている。実際、どういう方法でそのような成果を出しているのか、想像さえできないだろう。

(140401 第497回 写真上は対談中の塚本こなみ氏と中田宏氏。下は渡邉幸義氏)

 

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