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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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日本人の超絶技巧

2013.11.18

清水三年坂美術館 『Japanist』の前号では、木の彫刻で精緻に植物を表現する須田悦弘氏を紹介したが、次号では金属加工などで超絶技巧の世界を築いた明治期の「職人アーティスト」を紹介する。

 そのための取材で、畏友・奥山秀朗氏と京都の清水三年坂美術館を訪れ、館長の村田理如氏にお話しをうかがった。

 正直、ぶっ飛びました。あの頃の金工たちはこんなにすごかったのか、と。

 私は美術ファンを自認していたが、幕末・明治の工芸(金工、印籠、七宝、刀装具、根付、京薩摩など)にはほとんどなじみがなかった。鎖国を解いて開国した後、日本の職人アーティストの超絶技巧に度肝を抜かれた外国の目利きたちがこぞって買いあさり、ほとんどが海外に流出してしまったからだ。絵画の伊藤若冲もそのようなケースだと言っていいだろう。

 村田氏(村田製作所創業者のご子息)はアメリカに赴任中、ニューヨークのギャラリーで偶然、その当時の印籠に遭遇。その瞬間、恋に落ちてしまったらしい。

 爾来、コレクションを続け、しまいには会社を辞めてそれを本業とするほどまでに。

 そうやって買い戻した明治の工芸品は、現在約1万点。その一部を展示するために、清水の三年坂に私設美術館を開いたのだ。まさに、勲章ものの活躍である。

 作品の詳細は次号に譲るとして、ここでは「職人アーティスト」についてふれたい。

 読んで字の如く、職人でありながらアーティストでもある。そういう人がめっきり減ってしまった。

 そもそも本物の職人が少なくなった。わが国における製造業の衰退とともにその流れは加速がついており、こうしている今でも国宝級の技術が霧消している。

 そういう状況下、いくら優れた芸大で学んでも、ある一定以上のレベルの作品をつくることはできない。デザイナーやプロデューサーや評論家、研究家の類は量産できるとしても、〝腕と感性が勝負〟の工芸技術など磨くことはできない。尊敬すべき友人である、エアロコンセプトの菅野敬一氏のような例は、宝くじで1等当選したくらいの稀なケースだといっていい。

 日本の国力を上げるため、安倍さんはほんとうによくやっていると思う。鳩山&菅と比べると、同じ国のリーダーとは思えないほどに。だが、日本の成長戦略をもう一度、見直してもらいたい。それは、現場の末端に存在する希少な技術の保護・育成だ。

 (131118 第467回 写真は、正阿弥勝義作『古瓦鳩香炉』)

 

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