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紺碧の将

名古屋コーチンと星野仙一

2008.02.02

 大阪、名古屋へ取材・撮影のため出張した折、名古屋コーチンの店・三和(創業昭和8年)へ行った。

 実は恥ずかしながら、名古屋コーチンが鶏の名だと知ったのは最近のことである。それまでは、お笑い芸人の名かスポーツのコーチをもじった悪ふざけかと思った。子どもの頃からドラゴンズ・ファンなのに、しょせんその程度の知識なのであった。

 蛇足ながら、なぜ関東に住む私がドラゴンズファンであったか? 周りはすべてジャイアンツファン。まさに四面楚歌状態であったが、それを貫けたのは一にも二にも星野仙一の魅力による。

 なにしろ、熱血漢であった。往年の王、長嶋を相手にしても一歩もひるまない。ベンチが敬遠を指示しても従わず、真っ向から勝負して、そして……結局打たれる。打たれると、グラブを思い切り地面に叩きつけて悔しがる。あのヤンチャぶりが良かった。真っ向から勝負して、ピシャリと抑えたらもっとかっこよかったんだけどね。

 というわけで、会社創業の頃は、「コンパス・ポイントは中日ドラゴンズを応援しています」という広告をある雑誌に掲載していた。実際には、コンパス・ポイントではなく、ただ単に私の個人的な事情によるものだったんだけど、まあそのあたりは大らかと言おうか、誰も咎め立てはしなかった。

 さて、名古屋コーチンである。前菜から鍋料理、はたまたデザートまで名古屋コーチンというコースを食べたのだが、それだけ続いても苦しゅうないから不思議だ。これはいったい何が違うのだ?

 後味がいいのだ。そう言えば、星野仙一のピッチングも後味が良かった。けっして洗練されてはいないが、潔さがあった。

 ところで、タクシーの中でラジオを聞いていたら、おもしろいことを言っていた。

「セコイ」という表現が、一般的な意味と異なるのだ。普通、「ケチ」とか「しみったれ」という意味に使われるが、名古屋では「わたし、今日セコイわ」などと使われるという。名古屋人はみんなセコイのか? と思うかもしれないが、いくらなんでも全員が全員セコイわけではない。実は、名古屋での「セコイ」は、「疲れた」とか「大変だ」を意味するらしい。だから、名古屋へ行って、道行く人から「今日、わたしはセコイんです」と言われたら、背負ってあげるなり、手をひいてあげるなり、手助けしなければいけません。

 そして、エスカレーターに乗る時のこと。関東は左側に立つが、大阪は右側に立つ。では、名古屋は?

 答えは、左側でした。

 じゃあいったい、右と左の分岐点はどのあたりになるのだろう。そう言うと、同行していた珍道さん(本当の名字です)が、「関ヶ原あたりじゃないですか」とすかさず答えた。

「うまい! 座布団一枚!」。それでこそ天下分け目である。

 五臓六腑と毛細血管の随所に名古屋コーチンが染みわたるのを感じながら、名古屋をあとにしたのであった。

(080202 第33回  写真は三和の入口看板 )

 

 

 

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