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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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やっぱり地球は生きている

2013.02.26

上空から滝 またひとつ、深まった。地球は生きているという確信が……。しかも、地球は心をもっているという確信が……。ジンバブエとザンビアの国境にあるヴィクトリアの滝を間近で見て、本気でそう思ったのだった。

 最近はあまり聞かなくなったが、日本人はずっと「お天道様が見ている」という言葉を使っていた。それはただの観念的な言い回しではなかったのではないかと密かに思っている。実際に、先人たちは地球に見られていることがわかり、それがやがて「お天道様が見ている」という言い回しに発展したのではないかと根拠もなく考えている(地球のどこかに大きな目があることをイメージしてほしい)。

 理由は? と問われれば、返す言葉もない。が、あえて言えば、「だって、あの滝を見ちゃったら、そう感じる以外にないも〜ん」というところか。

 

 ヴィクトリアの滝は、滝幅1708メートル、落差108メートルに及ぶ、とんでもない滝である。さまざまなガイドブックをひもとけば、「1855年、イギリスの宣教師兼探検家、デイヴィッド・リヴィングストンによって発見された」とあるが、当然のことながら地元の人たちは、すでに滝の存在を知っていた。ちゃんと「モシ・オ・トゥニャ」という名前もつけられていた。

 巨大な滝の話を聞きつけたリヴィングストンが地元の人たちに道案内をさせて滝の観光に行ったことが「発見」となり、母国のヴィクトリア女王に捧げたことから、そういう名前が冠された。セコイというか狡いというか、発見でもなんでもないじゃないか。現地人以外の白人として最初に見た、という程度のものだ。

 ま、それはいい。

 7年前、イグアスの滝へ行ったときは、ちょうど乾期だったので水量が乏しかったが、今回は雨期。だから、ヴィクトリアの滝を訪れるのが楽しみだった。それでも「ミストサウナのような感じかな」と高をくくっていたことは事実。

 ところが、である。あの瀑風、水飛沫、轟音をどう表現すればいいだろう。水煙は約400メートル、ときには800メートルの高さに舞い上がり、ビショビショの水気を含んだ風が下から吹き上げてくる。雨具を着用していたが、あっという間に濡れネズミ状態だ。誰かが「洗車機のなかにいるような感じ」と言っていたが、まさにその通りだと思った。

 いっときも休まず暴れ続ける滝を見ながら思った。昨年、急逝した日本画家の松本哲男画伯は、どのようにしてこの滝を描ききったのだろうと。彼は50代の10年間のテーマを三大瀑布に費やしているが、それは創作というような生やさしいものではなく、まさに格闘技さながらの凄まじさであったことは容易に想像できる。

 2005年12月号の『fooga』特集記事で松本氏に取材したとき、彼はこう言っていた。

 「実際にヴィクトリアの滝を見て、それまでの滝の概念がまったく変わってしまった。ゴーッという凄まじい音を発しながら、地球の割れ目にとてつもない量の水が流れ落ちていく。そのすごさは現場で見ないとわからない。とにかく、われわれが普通に使う滝なんていう言葉の概念をはるかに越えていた。滝を前にして、一日目はただただ右往左往するだけ。なすすべもないという状態だった」

 しかし、ついに松本画伯はヴィクトリアの滝を画布に写し取ることに成功した。下の写真は、『ヴィクトリア・フォールズ』という大作の一部分だが、絵のなかから轟音が聞こえてくるような錯覚を覚えさせるほどの迫力がある(ただ、どのポイントから描いたのか、いまだにわからない)。

 

 どうあがいても太刀打ちできない自然と真っこうから向き合うこと。それは、世の中には人智を越えたものがあり、生には限りがあると思い知らせてくれ、ひいては一日一日を大切に生きよと諭してくれるのである。

 

 清濁を水けむりにし吐き出さん 悲喜こもごもなりアフリカの滝

(アフリカの大地にはどれほど理不尽で無慈悲な出来事があったことだろう。しかし、大きな滝はそれらをすべて飲み込んで、今も昔日と変わらず水煙を上げている。まさに、流れは絶えずしてしかも元の水にあらず、である)

 

 (130226 第404回 写真は、上空から見たヴィクトリア・フォールズ。撮影は、ツアーに同行した大岩浩さん)

0512L23

 

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