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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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日本が目指すべきモノづくり

2012.10.10

 シャープをはじめ、かつては世界を席巻した日本の

家電メーカーが苦境に陥っている。言うまでもなく、戦後の日本はモノづくりによって富国を計ってきた。もっと厳密にいえば、「規格大量生産型の加工貿易立国」だ。
 この壮大で緻密なビジョンはサンフランシス

コ講和条約直後、岸信介らによって描かれた。1955年、三木武吉らの主導で自由党と日本民主党の保守合同がなされ自由民主党が発足したが、そのときにできた「55年体制」によって日本の産業振興の骨格も定められたといっていい。
 当時、1億人近い人口が食べられる社会基盤を整備するというのは、途方もない大仕事だったと思う(人口=人の口である)。そして、日本はものの見事に復興を果たし、今でも世界有数の経済大国であり続けている。
 が、本来であれば、しかるべき時期に「規格大量生産型の加工貿易立国」の終焉を見通し、それに替わる新しい産業振興の絵図を描かなければいけなかった。しかし、「成功体験」は変革を阻害する。結局、あれよあれよという間に、名だたる日本のメーカーは苦境に立たされることになってしまった。
 と、カタ苦しい前置きはさておき、『Japanist』次号でご紹介する柳澤管楽器について書きたい。
 その名の通り、楽器を作っている会社だ。社長は3代目・柳澤信成氏。板橋区に本社・工場を構えている。取材・原稿を担当したのは、関口暁子さん(ちなみに、暁子嬢は出産・育児で1年くらい巣ごもりしていたが、第13号でめでたく復帰。長いブランクを感じさせない健筆は称賛に値しよう)。柳澤管楽器は、サクソフォンだけを作っている会社だ。この業界ではフランスのセルマー社が一頭ぬきんでているが、柳澤管楽器はそれに次ぐ位置につけている。
 社員は約100人。すべての工程を手作業によって年間7800本を作っている。
 柳澤社長のキャラがまたいい。ひとことで言えば、地顔が笑顔。笑う回数が多いので、自然に笑い皺が刻まれたのだろう。
 なぜ、地顔が笑顔なのか? 心が笑っているからだ。
 と書くと、理由もなく笑っているようにも思えるが、もちろん

そうではない。夢があるから笑うのだ。セルマー社を追い越し、世界一のサクソフォンメーカーにしたいのだという。もちろん、この場合の「世界一」とは、生産本数や売上高ではない。「音の質」だ。
 詳しくは今月25日に発売される『Japanist』第15号に譲るが、チラ見というか、ちょっとだけ柳澤語録を紹介したい。

──工程を省いて、もっと簡単に作ることはできるが、ウチはしません。簡単に作ったものは、簡単に飽きる音しか出てこないのです。簡単に飽きる音を作れば、買い換え喚起になるでしょうが、それもしません。私たちは、一生使いたくなる楽器を作っていきたいからです。いや、一生とは言わず、自分の子どもにも受け継ぎたいというような楽器作りを目指しています。
──コスト計算はしたことがありません。コストありきでモノづくりをすると、良いものは作れないからです。──直販はしません。自分たちの作った商品を自分たちの力で売りたいという考え方もあると思うが、あくまでも作り手としてモノづくりに携わっていきたい。販売まで考えると、「売るためのモノづくり」になってしまう。
──いつも社員たちには、「女房、子ども、友人たちに『どうだ、俺の仕事はすごいだろ』と自信を持てる仕事をしよう」と言っている。

 どうです? 素敵でしょう?
 今年の夏は柳澤氏に触発され、サックスものをよく聴いた。ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーン、アート・ペッパー、チャーリー・パーカー、キャノンボール・アダレイ、デイヴィッド・サンボーン……。
 サックスの音色のちがいを聴き分けようと耳を澄ませながらたくさん聴いた。ときどき、ゾクゾクッとするほど官能的な音がある。聴いていてそれなんだから、吹いている方はたまらないだろうな。
(第373回 写真は、サクソフォンに刻印されたサイン。Yanagisawa JAPANとある)

 

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