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自分が好きなことを見つけて無我夢中で取り組み、ひとつずつ目標をクリアする。そうやって愉しみながら、自分という人間をぶ厚くしていく……。今がベストで、未来には未知の楽しみがある。これが、多樂の本質である、と『多樂スパイラル』のまえがきで書いたが、その原理原則は今も変わっていない。

日々の生活のなかで、森羅万象に潜む多樂をいかに味わうか。心に映りゆくよしなごとを書き留めておこう。それが読者の方々にとって、なんらかのスパイスになればとの願いもこめて…。

 

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101歳、人生の達人

2012.05.28

 先日、「すぎなみ大人塾」開講記念講演会にて安藤久蔵氏のお話を聞いてきた。

 85歳で起業し、今でもコーヒー豆店を経営している101歳の男性である。

 のっけから結論を書くが、こういう人こそ「人生の達人」というのだろう。天から与えられた一生をとことん味わい尽くし、謳歌し尽くしているのだ。当日は撮影禁止だったので安藤さんの顔写真を撮影することができず、苦肉の策として私が敬愛する書家・酒井真沙氏の『愛』でごまかすことにした。なぜなら、安藤さんはまさに愛の権化だからである。

 安藤さんは、お話のなかで、何度も「人が喜ぶことをすれば、必ず人が集まってくる」とおっしゃった。つまり、愛が核になっているのだ(と、強引に右上の写真と合わせたのであった)。

 

 1911年、千葉県に生まれた安藤さんは慶応義塾大学を卒業後、貿易会社勤務を経て、17歳で漁師に。南極大陸やノルウェー沖にまで出かける遠洋漁業を生業とした。欲をかいて無謀なことをして、何度も死にかけたことがあるという。

 50歳で漁師を引退後、好きな登山に熱中する。国内の名山はすべて踏破し、ケニヤ、タンザニア、コロンビアなどの高峰にも登ったという。なにしろ101歳の今も現役で、仲間たちを引率して富士山なんかにもヒョロッと登ってしまう。しかも、中腹からの登山は感動が小さいと言って、なるべく麓の低い位置から登るという。

 やがて、海外で出会った登山仲間と親密になるうち、あることに気づかされる。コーヒー豆の生産者である彼らは、信じられないほどの低賃金で働かされているのだ。巨大なマーケットの生け贄とされている彼らを見て、一念奮起。フェアトレード方式でコーヒー豆を輸入し、自ら販売することを始める。そのとき、御年85歳。ちなみに、フェアトレードとは、公正な貿易のことをいう。簡単にいえば、途上国の生産者に公正な賃金や労働条件を保証した価格で商品を購入すること。途上国の自立や環境保全を支援する国際協力の新しい形として注目されている。

 そして、安藤さんは西荻窪駅前に「アロマフレッシュ」というコーヒー豆輸入販売店を開き、日・水・金の週3日営業している。

 では、他の日は遊んでいるのかと思いきや、月・火・木・土は自転車で配達しているというから驚き桃の木山椒の木である。遠いところでは、三軒茶屋まで自ら配達する。今は宅急便などの便利なものがあるのだからそれを使えばいいじゃないかという助言にも耳を貸さない。自分が挽いた豆を直接お客さんに手渡したいのだという。便利さや効率などより、面倒だけどダイレクトに感動を得られる方を選ぶという、相当にスガノチックな方である。

 そんな安藤さんの姿は、若者たちにとって最高の教科書になりえている。

 「アロマフレッシュ」には何人もの若いニートが集まるのだが、安藤さんは彼らをけっして責めない。

 「若いのに仕事もしないでブラブラしていてダメじゃないか」と言うかわりに、「オレも生まれ変わったら君たちみたいにのんびり生きたいな。いいな、君たちは」と肯定するのだという。

 やがて、101歳になっても忙しく仕事を続ける安藤さんの後ろ姿を見て、若者たちは自分から腰を上げる。楽しそうに仕事をしている姿を見せつけられ、自分でもやってみたいと思うのだろう。おまけに、最初の給料を全額母親にあげてしまう若者もいるらしい。

 安藤さんはそういう彼らに笑顔で問う。

 「仕事をしないでお母さんから小遣いをもらっていた頃と、仕事をして親に喜んでもらえる今とではどっちがいい?」

 若者たちの答えは言わずもがなである。

 安藤さんは、かなり高額の軍人恩給をもらえる権利があるが、それも辞退し、毎日体を使って仕事をし、納税をしている。健康保険はこの30年間使っていないという。

 お話を聞いた後、とても地下鉄を使う気になれず、会場の東高円寺から徒歩で1時間20分かけて帰ってきた。

 朝4時半には起床し、地域の仲間たちを連れて毎日3時間以上も歩くという安藤さん。はっきり言って、あなたは日本国民のお手本です。おそれいりました。

 いずれ『Japanist』で紹介させていただきます。

(120528 第343回 写真は酒井真沙作『愛』)

 

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